山際 淳司 「Give up―オフコース・ストーリー」

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組織においての
2番手というものの
存在の大事さを
大いに感じさせる
鈴木康博の脱退というものは
まさにそれを象徴する
出来事であった
小田が歌い始め
メンバーによる
コーラスがかぶさり
間奏では鈴木のキターソロが
繰り出される
これがオフコースとしての
王道パターンになっていたと思う
決して小田自身が
キーボードソロを
とることはなかった
小田の歌詞というのは
恋愛の中で
揺れる恋人達の
心情を歌っていて
とても微妙で
繊細な心の内を
表現している
これはもやもやっとした
形にできないようなもので
これがメンバー全員の
コーラスとしての歌声が重なり
鈴木のギターで昇華される
その心地良さ、素晴らしさ
この一連の流れこそが
オフコースのステージングを
決定づけていた
決して小田ひとりで
成立していたものではなかった
鈴木の脱退の意志が固いことに
気づいた小田は
もはや解散しかないと
思っただろうか
何度も思いとどめようと
しただろうが
鈴木の決心は揺るがなかった
「さよなら」のヒット以降
鈴木は曲作りに悩み
なかなか書けなかった
悩み、苦しんだ末に書けた
「いくつもの星の下で」
「一億の夜を越えて」は
鈴木の代表作ともなり
キャリアの中で
欠かすことのできない
これを語らずしては
鈴木を語れないほどの
名曲となりおおせた

2番手としての立ち位置を
割り切って演じることができれば
その後も5人のオフコース
存続はあり得ただろう
しかしそうできなかった
まさにそのことが
ファンのオフコースへの
愛情をより高いものに
押し上げる原動力でも
あっただろう

心を動かすもの
揺り動かされるものというものは
そういったものだろう
愛おしいものを語るように
昔を振り返るファンによって
語られる曲群は
今でもほとんど
5人のオフコース
あった頃までの
曲達ばかりである
そういった意味で
何十年も経った現在でも
鈴木の貢献は称えられ
その称賛の声は
未だに止むことがない